最近、お稽古歴8年以上の生徒さんが増えてきました。
気がつけば、10年以上通ってくださっている生徒さんもいらっしゃいます。
長く続けてくださっている生徒さんを見るたびに、ふと自分が箏と出会った頃のことを思い出します。
私が初めて箏に心を奪われたのは、中学3年生の冬でした。
地元の私立高校へ願書を提出しに行った日のことです。
その高校は第一志望ではなかったため、正直なところ学校そのものにはあまり興味がありませんでした。
学校の方が校内を案内してくださったのですが、当時の私は早く帰りたくて、話も上の空でした。
ところが、ある和室に足を踏み入れた瞬間、気持ちが一変します。
い草の香りが漂う静かな部屋。
そして、ずらりと並んだ箏。
その光景を見た瞬間、不思議なくらい目が離せなくなりました。
その時初めて、箏曲部という部活動の存在を知りました。
それまでの私にとって箏は、テレビやお正月の音楽で耳にする程度の存在でした。
自分とはまったく縁のない楽器で、演奏してみたいと思ったこともありませんでした。
それなのに、「私も弾いてみたい」と強く思ったのを今でも覚えています。
入学した高校には箏曲部がありませんでした。
それでも、あの日見た箏のことが忘れられず、「大学に進学したら必ず箏をやろう」と心に決めました。
当時はインターネットもなく、箏を習うという発想もありませんでした。
箏を始めるには大学の部活動に入るしかないと思っていたのです。
そして大学に入学し、邦楽クラブに入部しました。
箏をやりたいと思ったあの日から4年。ようやく箏を始めることができました。
しかし、憧れの箏は思っていた以上に難しく、なかなか思うようには弾けませんでした。
それでも私は辞めませんでした。
なぜそこまで続けられたのか、自分でもよく分かりません。
ただ、気がつけば箏は私の人生の一部になっていました。
熱しやすく冷めやすい性格の私が、まさか30年も箏を続けることになるとは、当時は想像もしていませんでした。
あの日、和室で見た箏。
もしあの時、校内見学をせずに帰っていたら、今とは違う人生になっていたかもしれません。
人生の転機は、意外なところにあるものですね。
